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「十二歳の夏に」最終回です
ようやく完成しました。近日中にサイトにもアップします。多少、表現等に変更があるかもしれませんが、基本的にはこのままでアップするつもりです。

お読みになった方は、拍手、感想等をくださると嬉しいです(^o^)

次回作に繋がる励みになりますので、どうぞよろしくお願い致します<(_ _)>

☆6/16 AM1:00 レイ達が町を去るラストのシーンを数箇所、書き直し、及び書き足しました。ストーリー的には変わりありません。申し訳ありません。

では、続きからどうぞ。


 トッドの胸に大きな穴が開き、盛大に血と肉が飛び散る。その身体はそのまま後ろに吹っ飛んで動かなくなった。
「……まったく驚いたな。先客がいたとはね。大丈夫か、二人とも」
 黒いぼさぼさ髪にくたびれた革のジャンパーを着て、ショットガンを構えた男が開け放したドアの前に立っている。男は呆れたような顔で二人を見ている。
「俺は大丈夫、ダークさん。でもレイが」
 ダークはレイに近寄ると、腹の傷を確認した。
「こいつは酷いな。早く救急車を呼ばないと」
「駄目だよ! 彼はヴァンパイアなんだ。正体がばれたら殺されちまう。ダークさん、どうか彼を見逃してやってくれよ。レイは俺の大切な友人なんだ」
「え? ああ、そうなのか! だから彼はここに呼ばれたんだな。大丈夫だよ、テリー。俺はガキのヴァンパイアなんかに興味はねえから」 
 ダークはレイをそっと立たせ、そのまま抱き上げるとベッドの上に寝かせた。
「少し横になっているといい。血が止まったら家に連れて行ってやる」
「ありがとう、ダークさん。でも……」
「お前、もしかして母親のことを心配してるのか? 大丈夫だ。俺は子供から母親を取り上げるような酷なことはしねえよ。ああ、それからもういい加減ダークさんっていうのは止めてくれねえか? 背中がむずむずしてくる。ダークでいいよ」
「判った。で、何でここに来たんだよ、ダーク」
 ベッドの端に腰を下ろしたテリーが問いかけると、ダークはポケットから一枚の写真を取り出した。それは間違いなくトッドの写真だった。
「俺が所属してるハンター組織から、数日前にこれが送られてきた。こいつは各地でヴァンパイアの子供を騙しては誘拐してモンスター専門の売買グループに売っていたらしい。俺はそういうことは嫌いだが、本来それ自体は違法行為じゃないし、こいつはそうやって自分が狩られることなく生活していた。だが、最近になって数人の人間の子供の売買事件にも関わっていることが判って警察から組織に依頼が来たそうだ。で、こいつがこのあたりの何処かの町に潜んでいるという情報があって、俺にも指令が来た。俺は聞き込みを続けてこの診療所を探り当て、殴りこんだってわけだよ。さあ、次はお前達がどうしてここにいたのかを説明してくれよ」
 レイはジャッキーがここを紹介してくれたことを話した。彼が話し終えると、テリーは悔しそうに唇を噛んだ。
「畜生。ジャッキーの奴、そんなことをしてたなんて信じられねえよ」
「テリー、お前はどうしてここへ?」
「ああ、あの時、お前達の様子がなんかおかしかったんで、帰るふりをして戻ってきたんだ。隠れて見てたらあの林の中にお前達が入っていった。でもしばらくすると、ジャッキーだけが走って出てきた。何だか凄く周りを気にしながらね。俺は気になってしょうがないから、ジャッキーが見えなくなってから、ここに来てみたんだ。ドアの近くまで来たら、叫び声が聞こえて、急いでドアを蹴破って飛び込んできたってわけさ。受付の看護婦が飛び掛かってきたから蹴り飛ばして気絶させてやったよ」
「そうだったのか。ありがとう、テリー」
「お礼なんていいよ。友人なんだから助けるのが当然だし、お前だって俺を助けてくれたじゃねえか」
「でも、俺はヴァンパイアだよ」
「関係ないよ、そんなこと」
 テリーはふっと優しい笑みを浮かべた。
「お前が何であろうと、俺の友人であることには変わりがない。そうだろ?」
「でも、お前はハンターになることが夢なんだろ」
「まあね。でも、俺、ヴァンパイアは全部が悪い奴じゃないってことに気が付いたんだ。お前はいい奴だし、考え方も行動も人間と変わんねえしな。でもさ、あいつをやっつけたダークを見て、やっぱりかっこいいなとも思った。だから悪いヴァンパイア専門のハンターだったらなってもいいかなって思ってる」
「そうか。それもいいかもしれないね」
 レイは再び襲ってきた激痛に顔を顰めた。
「もう喋らなくていいよ、レイ。俺はダークと話をしてるから」
「うん、そうする」
 レイは目を瞑った。目じりから自然に涙が溢れ出てくる。だが、それは悲しみの涙ではなかった。

 ダークはトッドと受付の看護婦を縛りあげ、猿轡を噛ませた。一時間ほどでレイの傷は塞がり、出血も止まった。ダークは受付のカウンターの上の電話から組織に連絡を取り、どうにか歩くことが出来るようになったレイに自分の革ジャンを着せて傷を隠し、診療所に鍵を掛けて休診の札を下げると家まで送って行った。テリーはレイの家までついていき、そのままアメリアの働いてる店に知らせに行った。

 十分後、急いで戻ってきたアメリアはダークの姿を見て、瞬時に身構えた。目が青く光り、光沢のある長い二本の牙がぎらりと伸び始める。ダークは慌てて両手を振り回した。
「ちょっと待った! 俺は彼に何もしてねえよ!」
 レイはベッドから半身を起して叫んだ。
「母さん、待って! 彼は俺達を助けてくれたんだ!」
 その時、テリーが息を切らせながら部屋に入ってきた。
「お前の母さん、足が速いなあ。自転車でも追いつくのが大変だったぜ。俺がレイが怪我したって言った途端に店を飛び出して走り出すんだもの。説明する暇もねえよ」
「……何だか判らないけど、とにかくそこをどいてちょうだい!」
 ダークがレイのベッドから離れると、アメリアはレイの枕元に駆け寄った。
「大丈夫? レイ。なんて酷い傷なのかしら……とにかく眠りなさい。眠ったほうが治りは早いのよ」
「うん」
 レイは母の顔をじっと見た。やっと家に帰ってきた。安心したと同時に眠気が襲ってくる。レイは疼く傷の痛みの波から逃れるように目を閉じた。

 キッチンのテーブルでテリーがこれまで起こったことの説明を終えると、ダークはアメリアが持ってきたグラスのオレンジジュースを一気に飲み干して、立ちあがった。
「まあ、そういうわけだ。俺はレイのこともあんたのことも組織には話さねえから安心しな。さて、そろそろ現場に戻らねえと、組織の奴が先に来てたら面倒だからな」
 アメリアは立ち上がり、ダークに近寄ると右手を差し出した。
「ありがとう、ダークさん」
 ダークはその手をそっと握り返す。
「いや、まあ、仕事だったんでね。それより、あのジャッキーってガキが、レイがまだここにいるって知ったらまた違うハンターにこの家のことを通報するかもしれねえ。すぐにでもここを出たほうがいい」
「そうするつもりよ。ご忠告感謝するわ」
アメリアは軽く微笑むと、手を離した。
「じゃあな、テリー」
 ダークが出て行こうとすると、テリーが慌てて呼びとめた。
「あ、あの、今度また話を聞きに行ってもいいかな? ダーク」
「ああ、構わねえよ。まだしばらくはこの町にいるつもりだからな」

 二日後の早朝、レイ達は荷物をスーツケースにまとめて家を出た。レイの傷はすっかり治っていた。町の外れにある幹線道路のバス停まで歩き、そこから長距離バスに乗る。レイは何度も後ろを振り返った。引っ越しは慣れっこになっていたが、住み慣れた頃に町を離れるのはやはり悲しい。だが、それ以上に辛いのは親しくなった友人と別れなければならないことだ。
「もう行き先は決めてあるのよ、レイ。心配はいらないわ」
 お気に入りのワンピースを着たアメリアがにっこりと笑う。レイは前の日に買ってもらったばかりの赤いチェックのシャツを着ていたが、その明るい色合いも彼の悲しみを和らげることは出来なかった。
「おーい! レイ!」
 後ろから聞こえてきた声にレイが振り返ると、紺と白のボーダーTシャツのテリーが懸命に自転車を漕いでくるところだった。きゅっと音をさせて自転車を止めると、テリーはちょっと恥ずかしそうに微笑んだ。その胸に牙のネックレスはなかった。
「テリー! 見送りに来てくれたのか」
「まあな。もう少しで寝坊するところだったよ。あ、それと、ひとつお願いがあるんです、アメリアさん。兄貴からポラロイドカメラを借りてきたんで写真を二枚撮ってくれませんか」
「ええ、いいわよ」
 レイ達は普段は写真に写されることを極力避けていた。だが、この時のアメリアはテリーの願いを快く引き受けた。 自転車を降り、アメリアにカメラを渡すと、テリーは横に並んだレイの寂しそうな顔を見てひょいっと肩に腕を回し、そっと呟いた。
「笑ってくれよ、レイ。俺、笑ってるお前が一番好きだからさ」
 レイはこくりと頷くとテリーの為に精一杯の笑顔を見せた。アメリアはテリーの言った通り写真を二枚撮った。
「これは、お前にやる。俺のこと忘れないでくれよ。もう一枚は俺が持ってる。お前のことを忘れない為にね」
 そこに写っているのは朝日に輝く街並みを背にして肩を組み、幸せそうに微笑む二人の子供。一人は人間、一人はヴァンパイア。種族は違っても、時が過ぎても、写真の中の二人の友情は変わらない。永遠に。
「それじゃ、元気でな、レイ。また会えるといいな」 
 テリーはそう言いながらレイに片手を差し出した。レイはその手を強く握り返した。
「ああ。いろいろありがとう、テリー。元気でね」
 テリーは笑顔で頷くと再び自転車に跨り、軽く片手を上げ、ゆっくりと走り去っていった。
「さあ、行きましょう、レイ」
 アメリアがスーツケースを掴んで再び歩き始める。

――次の町に行っても、また満月の日はやってくる。でも、せめて今だけはそのことは忘れよう。
 
 レイは手に持った写真をそっと眺めながら、次第に強くなる日差しの中を母の後を追って歩み始めた。

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