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「十二歳の夏に」その10です
あと一回と思いましたが、もう少し続きます。たぶん次回で終了です。

続きからどうぞ。


 トッドは立ち上がり、机の上に置いてあった蓋を開けた瓶にそっと手を伸ばした。レイの顎をいきなり手で掴み、頭を上向かせると、次の瞬間、レイの口の中に瓶の中身を一気に流し込んだ。
 激しく噎せ返りながら、レイは目を開け、トッドを突き飛ばして立ち上がった。
「な……何するんですか!」
 レイは逃げようとしたが、足がもつれてそのまま床に倒れ伏した。あっという間に全身が痺れ、感覚がなくなってくる。
「この……薬……」
 舌が痺れて上手く喋ることが出来ない。
 トッドは満面に笑みを浮かべながら、ゆっくりと立ち上がり、レイの頭の横まで歩いてくると、うつ伏せに横たわった彼の戸惑った顔を満足そうに見下ろした。
「甘いねえ、君。そんな話を信じるなんて。君はこれからゆっくり眠るんだ。ただし、次に目が覚めた時には手足を縛られて檻の中だけどね」
「ジャッキーを……騙したな!」
「ジャッキー? ああ、あいつは先刻承知だよ。それ相応の報酬も渡してる。この間も一人紹介してもらった。いい値で売れたよ。でも、君なら彼の数倍の値で売れる。まあ、買ってくれる奴らにまともな奴はいないけど、せいぜい可愛がってもらうといい」
 トッドは下卑た笑い声を上げた。
 
――ジャッキー……俺を売ったのか? そんな……嫌だ! 信じたくない!

 意識が朦朧としてくる。男の笑い声が頭の中を駆け巡る。

――母さん、ごめん。俺……馬鹿だったよ。

 トッドはその場でしゃがむと、レイの顔をじっと眺めた。その視線は身体を舐めるように下に降りていく。
「それにしても君は綺麗だねえ。今まで捕まえた子供の中じゃ一番だな」
 トッドがレイの身体に手を伸ばした瞬間、ドアを勢いよく開けて走りこんできた誰かが男を真横から蹴り飛ばした。トッドは床に倒れ、呻き声を上げた。
「レイ! 大丈夫か?」
 心配そうに声を掛けてきた少年の顔を見て、レイは目を見張った。テリーだ。だが、レイを抱き起そうとするテリーを睨みながら男はゆっくりと立ち上がった。その眼は青く光り、鋭い二本の牙が口の端から飛び出している。

――こいつ、ヴァンパイアだ! テリーが危ない!

 レイは必死にテリーに知らせようとするが、声が出ない。男はあっという間にテリーに飛び掛かった。床に倒され、叫び声を上げながら、テリーは両手を伸ばして必死に抵抗した。トッドは彼の身体に跨り、腹や顔をしたたかに殴りつけて両腕をがっしりと抑え込んでしまった。ほどなくテリーのネックレスに気が付いたトッドは凶暴な牙をむき出してニヤリと笑った。
「ほう? ヴァンパイアの牙か。ずいぶん貧弱だな。今、もっと立派な牙をお前の首に食い込ませてやるよ。どうだ? 嬉しいだろ」
 テリーの首筋に鋭い二本の牙がゆっくりと近付いていく。テリーは叫び声を上げながら必死に頭を振っている。

――テリーが殺される!

 その時、レイの胸が火のように熱くなり、彼は飲まされた液体を一気に吐き出した。同時に身体を拘束していた痺れが嘘のように消え失せる。レイは素早く身を起こし、トッドに近付くと首の後ろを掴み、テリーから引き剥がして振り払うように投げ捨てた。男の身体が宙を飛び、激しく壁にぶつかって滑り落ちる。レイは自分の力が信じられなかった。
「レイ! お前……ヴァンパイアだったのか」
 テリーが信じられないといった表情でレイを見つめている。レイは口元に手をあて、自分の牙が伸びているのに気付いた。一瞬の動揺。
「レイ、後ろ!」
 瞬時に後ろを振り返り、身構えた時にはトッドはレイのすぐ前に来ていた。レイは必死に殴りかかったが男は左手でレイの突き出した腕を掴み、彼の身体を自分のほうへぐいっと引き寄せた。トッドはレイがよろけて自分の身体にぶつかった瞬間、右手を白衣のポケットに突っ込んだ。
「う……!」
 トッドはにやりと笑うと呻き声を上げたレイの身体を突き放した。血に染まった白衣のポケットの底を破り、鋭く長いナイフの刃が突き出している。レイは両手で血が溢れ出る腹を押さえていた。激痛に身体を震わせながらも、レイは必死で男に殴りかかった。トッドはポケットから手を引き抜き、向かってきた彼の腹に再度ナイフを突き立てた。
「あ……あ!」
 レイは強烈な痛みに立っていることが出来ず、腹を抱え込むようにしてその場にがっくりと膝をついた。
「私に抵抗しようとしたって無駄だよ、レイ」
 トッドはにやにやと笑いながらレイを見下ろしている。
「……ちっくしょう、てめえ!」
 テリーがよろよろと立ち上がり、トッドに向かっていこうとしている。
「テリー、だめだ! 逃げろ!」
「おやおや、君のお友達は血の気が多そうだね。きっと味もいいに違いない」
 トッドがナイフを構え、べろりと舌なめずりをしながらテリーのほうを見た瞬間、耳をつんざくような銃声が轟いた。

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