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「十二歳の夏に」その9です
第9回アップしました。後一回で連載終了の予定です。
 
続きからどうぞ。


 一週間後、アメリアが仕事に出かけて二時間ほど経った頃、ジャッキーがやってきた。それまでの間、レイはジャッキーの誘いを受けたことがよかったのかどうか、不安を抱えたまま過ごしていた。

「心配ないさ、レイ。話を聞いてもし不安だったら断ればいいんだから」
 新品の茶色いシャツを着たジャッキーはいつになく上機嫌だった。不安そうなレイを励ます様に、肩をぽん、と叩く。
「うん……ねえ、ジャッキー。お前、一緒にいてくれるよね?」
「ああ。さあ、早く行こう。約束の時間に遅れるぞ」
 レイは自分が選んだカーキ色のTシャツに目を落とした。母が数日前に買ってくれたものだ。大丈夫だ。勇気を出せ。自分に言い聞かせながらシャツの胸をぎゅっと掴むとレイは顔を上げた。
「判った。行こう」
 先に立って歩き出したジャッキーの後をレイは少し遅れ気味についていく。住宅街から商店街を通り抜けてしばらく歩き続けると、やがて人家はまばらになり、行く手には鬱蒼とした林が見えてきた。
「ほら、あの奥に白い建物が見えるだろ。あれが診療所だよ」
「よう、レイ、ジャッキー。何処へ行くんだ?」
 ジャッキーは身体をびくりと震わせて振り向いた。日差しの眩しさに目を細めながら紺と白のボーダーTシャツを着たテリーが自転車を止めて立っていた。
「そこの診療所だよ。俺、ちょっと熱があって風邪ひいたみたいなんで見てもらおうと思って。ジャッキーがここがいいって言うから案内してもらったんだ」
 レイが慌てて答えた。その様子がよほど変に見えたのか、テリーはちょっと眉を顰めた。
「ふうん? それくらいならオットーの爺さんのクリニックで十分だけどな。ほら、俺が行きつけのとこ」
「いいじゃないか、テリー。ここは前に僕が見てもらって凄く親切だったからレイに勧めたんだ。別に構わないだろ?」
「そうか。まあ、いいけどな」
「おい、テリー。それ兄貴の自転車だろ? 乗っても大丈夫なのか?」
 ジャッキーが巧みに話を逸らす。
「ああ。兄貴はギア付きのを買ったんで俺がもらったのさ」
「へえ、いいなあ」
「なかなかいいだろ? レイ、風邪が治ったら貸してやるよ」
「ありがとう。楽しみにしてるよ」
「じゃあな」
 テリーはひょいっと片手を上げると、ゆっくりと自転車をこぎ始めた。車輪が渇いた砂埃を巻き上げる。彼の姿が見えなくなると、二人は再び歩き出した。林を抜け、白い平屋の診療所の前までくると、ジャッキーは急に立ち止った。
「レイ、悪いんだけどここから先は一人で行ってくれ。そういう決まりなんだ」
「え? でも、さっき……」
「ごめん。でもそうしないと中に入れてくれないんだよ。大丈夫。俺、帰ってくるまでここで待ってるから」
「……判った。じゃあ、行ってくるよ」
 レイは診療所のドアに続く数段の階段を上り、チャイムを押した。ドアが開き、無表情な看護婦がレイを迎え入れた。
 待合室は陽光が差し込み、明るかったが、待っている患者は誰もいない。
 すぐに名前が呼ばれ、レイは診察室に入って行った。

 強いアルコールの匂いが漂う診察室の中はかなり広かった。部屋の右側には壁に沿ってソファが置いてあり、左にはベッドが置かれている。部屋の奥に置かれた机の前に柔らかい笑みを浮かべて座っているのは銀髪をオールバックにした三十代くらいの細面の男だ。薄い茶色の瞳に銀縁の眼鏡を掛けた白衣の男は落ち着いた声で、レイに語りかけてきた。
「君がレイだね? 私はトッド・スミス。さあ、そこに掛けて」
「はい」
 丸椅子に腰を下ろしたレイは、おずおずとトッドに問い掛けた。
「あの、人間になれるって聞いたんですが、具体的にどんなことをするのか教えていただけますか」
「ああ、いいよ。ジャッキーから話は聞いている。心配ないよ、さあ、まず君が本当にヴァンパイアかどうかを確かめるから、目を瞑って口を開けなさい」
 レイは目を瞑り、口を開けた。男の指が左の牙の上の歯ぐきを強く押した。長い牙が伸びたのを見て、男は満足そうに溜息をついた。
「間違いないね。君は立派なヴァンパイアだ。ああ、もう少しそのままでいてくれるかな」

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