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「十二歳の夏に」その7です
第7回アップしました。続きからどうぞ。

拍手、ありがとうございました! 大変励みになります^^




「テリー、それ……」
「これか? かっこいいだろ。昨夜、兄貴にもらったんだ。知り合いの武器ショップのオーナーから買ってくれたんだぜ」
 テリーは首から革紐のネックレスを外すとレイのほうへ差し出した。
「見せてやるよ。これ、本物だぜ」
 レイはネックレスを受け取ると、右手の掌に乗せた。長い牙は歯根の部分が切断され、穴が開けられていた。その穴に革紐が結ばれている。
「……痛かったのかな。これを抜かれた時」
「え? ああ、判んねえな。殺した後に抜いてるかもしんねえし」

――俺も狩られたら牙を抜かれるのかな。ハンターは俺の牙に穴を開けて、汗臭くて薄汚い胸にぶら下げるんだろうか。
 
 吐き気がするほどの嫌悪感で微かに手が震える。レイが黙りこんでしまったので、テリーは少し心配になった。
「レイ、どうした。まだ気分悪いのか?」
「いや……大丈夫。これ、よく似あってるよ」
 レイはテリーにネックレスを返した。
「だろ? そろそろ行こうぜ。ジャッキーが待ってる」

 テリーが兄から仕入れた下ネタ混じりの面白おかしい話のおかげで、ジャッキーの家に着く頃には、レイの気持ちも少し落ち着きを取り戻していた。でも、もしもテリーが自分の正体に気付いたら、どうするだろう。そう思うとたちまち心は黒い雲に覆われてしまう。
「なあ、レイ。そっちの『Adventure Comics』、取ってくれよ。こっちの『バットマン』見せてやるからさ」
 テリーの言葉にはっとしてレイは顔を上げた。テリーは絨毯の上に座っているレイのすぐ横で寝転がっている。ジャッキーはベッドの端に腰かけていた。
「ああ、いいよ」
 ジャッキーの部屋の本棚には父親に買ってもらったコミック誌がぎっしりとつまっている。壁には『遊星よりの物体X』のポスターが貼られている。
「いいよなあ。コミック誌のヒーローって。俺がもしスーパーマンみたいだったら、素手でヴァンパイアを倒せるんだけどな」
「ねえ……テリー。もしも」
 もしも、親しい友人がヴァンパイアだと判ったら、お前はどうする? だが、その質問はレイの口から発せられることなく消えてしまった。
「何だよ?」
「いや、何でもない」
 このまま、俺はこの二人を騙し続けるのだろうか。この町を離れるその日まで。それとも思い切って打ち明けたほうがいいのだろうか。いや、テリーには言えない。でも、ジャッキーならどうだろうか。レイははっと息を飲んだ。ジャッキーは、彼は俺の正体に気付いているんじゃないだろうか。――これから君に何があっても、僕は君の友達だよ――その言葉を信じてみてもいいんじゃないだろうか。
「レイ、ドーナツ食えよ。なくなっちまうぞ」
 テリーはそう言いながら、皿に盛ったドーナツに遠慮なく手を伸ばす。
「なあ、ジャッキー。俺、ルーシーが気になってしょうがないんだ。あいつ美人だし、セクシーだろ?」
「ルーシーか。止めとけよ。あいつ、男をとっかえひっかえしてるって噂だぜ。奢らせるだけ奢らせて飽きたらさようならだってさ」
「ふうん。じゃあ、止めとこうかな。レイ、お前は好きな子いるのか?」
「いないよ。今のところはね」
 
――いや、気になる子がいないわけじゃない。でももう人間の女の子をデートに誘うことはないだろう。永久に。

 時間は瞬く間に過ぎていく。気がつくと五時を過ぎていた。
「じゃあ、俺は帰るよ。夕食の時間に遅れるとオヤジがうるさくってさ。レイはどうする?」
「まだいるよ。もう少しでこれ一冊、読み終わるから」
「そうか。じゃあまたな、ジャッキー、レイ」
 ジャッキーに借りたコミック誌を大事そうに抱えて、テリーは出て行った。しばらくするとジャッキーはベッドから立ち上がり、レイのすぐ横に腰を下ろした。
「レイ、もしかして僕に話したいことがあるんじゃないのか?」
 レイはジャッキーの勘の良さが少し怖くなった。もう隠しておくのは無理かもしれない。心臓の動悸が激しくなり、息が詰まりそうになってきた。コミック誌に目を落としたまま、声を絞り出す。
「ジャッキー、あの、驚かないで聞いてほしいんだけど……俺……」
「ヴァンパイア、なんだろ?」
 レイは顔を上げてジャッキーを見た。彼は柔らかく微笑んでいる。
「やっぱり気付いていたんだね」
「ああ。あの公園で君、テリーの傷を見ておかしくなっただろう? あの時、ほんの一瞬だけど長くて鋭い牙が見えたんだよ。見間違いかと思ってたんだけど、そうじゃなかったんだね」
「あの……」
 何を言えばいいんだろう。頭が真っ白になって何も言葉が浮かんでこない。そんなレイの戸惑いを汲み取ったかのようにジャッキーは言葉を続けた。
「心配しなくっていいよ。僕は誰にも言わないし、何もしない。だって僕達は友達じゃないか」
「ありがとう、ジャッキー」
「レイ、テリーには言うつもりか?」
「いや。だって彼はハンター志望だろ?」
「まあ、そうだね。そのほうがいい。で、やっぱり満月の日に人を襲うの? よかったら聞かせてくれないかなあ」
 レイは二日前のことをジャッキーに話して聞かせた。
「そうか……辛かっただろ?」
 レイは膝を抱え、唇を震わせて小さな子供のように泣き始めた。その肩にそっと手を回してジャッキーは呟く。
「大丈夫だよ、レイ。きっとすぐに苦しまなくても済むようになるさ」
 ジャッキーはレイの背中を優しく摩りながら唇の端に小さく笑みを浮かべた。

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