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「十二歳の夏に」その6です
第6回アップしました。続きからどうぞ。

拍手、ありがとうございます! 大変励みになります。

朝、目を覚ましたレイは身体を起こすと、窓から差し込んでくる信じられないほど眩しい日の光に目を細めた。

――昨夜の出来事は夢だったんだろうか。きっと夢だ。いや……夢なんかじゃない。俺はもう人間じゃない。いや、元から人間じゃなかったんだ。これからヴァンパイアとして生きていく運命を受け入れなければならない。

 そうしなければならないことは十分判っていた。だが、昨日までは希望を与えてくれた日の光が、今は無数の短剣のように肌に突き刺さってくる。ベッドから降りてブラインドを下ろす。
 ベッドに倒れこみ、毛布を被り、目を瞑る。
 怖い。
 今まで自分の周りに当たり前に存在したものの全てが、自分を非難し、滅ぼそうとしているように感じて、レイは身体を震わせた。
 アメリアがドアを開けて入ってきた。
「レイ? 起きてるの?」
 レイは返事をしなかった。アメリアはベッドに近付くと、そっと彼の柔らかい髪を撫でた。
「レイ、今日はバイトを休んでいいわ。私はもう出かけるから、ゆっくり寝ていなさい」
 バタン、とドアの閉まる音がレイの耳に響く。
 固く目を瞑り、楽しかった日々の出来事を思い起こす。今が現実なら、あれは全て夢だったに違いない。
 
 
「レイ、起きなさい。もう夜よ」
 アメリアの声に目を覚ますと、枕元の時計の針は午後七時過ぎを指していた。
「今いくよ、母さん」
 レイはのろのろと起き上って、部屋を出た。キッチンに入ると、テーブルの上にはポテトとブロッコリーが添えられたビーフ・ステーキとパンが乗せられていた。食欲のそそられるその匂いに誘われて、レイは椅子に腰を下ろした。 アメリアはコップにオレンジジュースを注ぎ、彼の前に置いた。
「ずっと寝てたのね。どう? 少しは気持ちが落ち着いたかしら」
 レイは黙ったまま、首を横に振った。アメリアはレイの後ろに回るとそっと胸に腕を回して抱きしめる。
「そう。大丈夫よ。今は辛いでしょうけど時が解決してくれるわ」
 彼女はレイのすぐ前に座ると、ステーキを小さく切り始めた。
「ああそうだ。夕方、ジャッキーが来たわよ。具合が悪くて寝ているって言っておいたけど、明日、元気になったら家に遊びに来ないかって言ってたわ。明日はバイトが休みの日でしょ?」
「そう。行かないよ。会いたくないし」
「駄目よ、レイ。明日から普段通りにしなさい」
「母さん! 俺は人間じゃないんだ。だのにどうやって友達と付き合ったらいいんだよ!」
アメリアはフォークを置くと、厳しい表情でじっとレイの目を見詰めた。
「レイ、聞いて。あなたは人間のふりをしなければならないの。これは人間の世界で生きていく為に必要なことなの。運命に立ち向かわなくちゃ生きてはいけないわ。さあ、いいから食べなさい。ステーキが冷えてしまうわ」
 生きていけなくったっていい。
 だが、さすがにそれを口に出すことは出来ない。これ以上、母を悲しませたくはない。レイはフォークでステーキを突き刺すと、一口齧った。溢れ出る肉汁が、一瞬、喉に流れ込む血液を思い起こさせる。自分が血の味を覚えてしまったことが悲しい。また涙が込み上げてくる。でもこれ以上、母に涙を見せたくはない。口に押し込んだステーキを無理やり飲み込むと、次の一切れに手を伸ばした。

 翌日、レイはいつもどおりに目を覚ました。朝食後、食器を洗い終わってアメリアとテレビを見ていると、ドアのチャイムが鳴った。レイが出てみると、テリーがニヤニヤしながらポーチに立っていた。
「よお、レイ。具合が悪かったそうだけど大丈夫か?」
「ああ、大丈夫だよ。もう治った」
 レイはまともに彼と目を合わせることが出来ず、彼の後ろに視線を彷徨わせていた。テリーはレイの視線に気づいて後ろを振り返って見た。
「後ろに何かいるのか?」
「ああ、いや。見かけない犬が歩いてたんで」
「そうか? 何もいなかったみたいだけど。まあ、いいや。ジャッキーが新しいコミック誌を見せてくれるってさ。もう行けるか?」
「こんにちは、テリー」
 いつの間にか、アメリアがレイの後ろに立っていた。
「あ……こんにちは。アメリアさん」
 テリーの顔がみるみるうちに赤くなった。だが、アメリアの浮かべた笑みはテリーの首に下がったものが目に入った途端に凍りついてしまった。レイは振り返って母の顔を見ると、テリーに視線を戻す。
 テリーの灰色のシャツの胸には、白い牙のネックレスが輝いていた。そこから漂ってくる微かな血と肉の匂い。それは紛れもなくヴァンパイアの牙だった。

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