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「十二歳の夏に」その3
第三回、アップしました。


 ダークの家を出ると、日差しはますます強くなっていた。風にそよぐ街路樹の影を選んで歩きながら、テリーがぽつりと呟いた。
「……あの男、チキン野郎だな」
「どうしてそんなこと言うんだよ、テリー」
 テリーはそんなことも判らないのかという顔でレイを見返した。
「いいか、レイ。ヴァンパイアは人間そっくりだけど、化け物だ。神に反するものだ。悪魔と同じさ。だから同情なんかしちゃいけないんだ」
 レイの脳裏に先ほどダークが見せてくれた二つの指輪が浮かんできた。恐らくは深く愛し合っていたのだろう。寄り添うように輝いていたその指輪達からは深い悲しみ以外の何も感じられなかった。

――本当に彼らはただの化け物なんだろうか?

「そうかな? 俺、よく判らなくなってきたよ」
「ふん、お前も他人に影響されやすい性格だよな。ジャッキーはどう思う?」
「僕か。どうでもいいよ。ハンターにもヴァンパイアにも興味はない」
「ふ~ん。まあ、いいや。俺、本当は仲良くなってヴァンパイアの牙をもらおうかと思ってたんだけど、仕方ねえな。通販で買うか」
 ジャッキーはちょっと眉を上げて呆れ顔でテリーを見る。
「テリー。雑誌の広告を信用してるのか? あんなの、偽物ばっかりだぞ」
「そんなこと買ってみなきゃ判んねえだろ? それにあれは強力な魔除けになるんだ。レイ、お前は欲しいと思わないか?」
「いや、別に。第一、そんなもの欲しいっていったって買ってもらえないよ」
 その時、レイは遠くから聞こえてくる聞き覚えのある音楽に気付いた。
「アイスクリームだ! もう近くまで来てるよ」
「え? 俺、何にも聞こえないけど」
「僕も」
 レイは訝しげな二人の顔に少し戸惑った。
「え……だって」
 甘いバニラの香りだってしてくるじゃないか。その言葉を口に出す寸前にレイは母の言葉を思い出した。気付かれちゃ駄目。例え相手が友達であっても。

「そう……気のせいかな」
 レイ達はしばらく黙って歩いていた。販売車のオルゴールの音がだんだん大きくなってくる。
「あっ。本当だ。聞こえてきた! レイ、耳がいいなあ」
 テリーの関心はもうアイスクリームに移っていたが、ジャッキーは不安げな視線をレイに向けていた。
 やがて、移動販売車の青と黄色の派手な車体が視界に入ってきた。あちこちの家から子供達が走り出てくる。
「俺、金持ってるから奢ってやるよ、行こうぜ! 俺、チョコミント!」
「じゃあ、お言葉に甘えて、僕はストロベリー。レイは?」
「僕はバニラがいいな」
 テリーはもう走り出していた。ジャッキーはその姿をしばらく見ていたが、やがて、レイのほうを見るとぽつり、と呟いた。
「レイ。君、十二歳になったんだよな?」
「ああ」
「これから君に何があっても、君は僕の友達だよ、レイ」
 ジャッキーはふっと優しげな笑みを見せて、車のほうに歩きだした。
「あ……うん」
 その言葉が何を意味しているのか、その時のレイには判らなかった。
 
 数日後の満月の夜。
 夕食後、アメリアがシャワーを浴びに行ったので、レイはソファに寝転がってジャッキーに借りたスーパーマンのコミック誌を眺めていた。彼は人を殺さない。でも、もし相手がヴァンパイアだったらどうするだろう。やはりハンターのように杭を打つのだろうか。でもそんなスーパーマンは嫌だし、想像もつかない。ぼんやりとそんなことを考えていると突然、喉が渇いてきた。
 キッチンへ入り、冷蔵庫から牛乳の瓶を取り出すと、コップに注ぐ。一気に飲み干した白い液体は、いつもとは違い喉を潤してはくれなかった。
 漠然とした不安を感じながらもう一杯牛乳を飲むと、ようやく渇きは治まった。
「レイ、あなたもシャワーを浴びなさい」
 アメリアの声に振り返ると、彼女はバスタオルを身体に巻いて、レイのほうを見ていた。
「どうしたの? レイ。何かあったの?」
 レイの表情がいつもと違うことに気付いたのか、アメリアが問いかけてきた。
「いや、なんでもないよ、母さん」
 軽い笑みを浮かべて母に答える。数日前、公園で起きた妙な衝動が脳裏に蘇ってくる。何か悪い病気になりかけているのだろうか。いや、単に暑さのせいに違いないと自分に言い聞かせる。あの日、ハンターの家に行ったことは母には内緒にしていた。母はハンターが嫌いだから、きっと気分を悪くするだろう。とにかく早くシャワーを浴びて寝てしまおうと、レイはバスルームへ向かった。

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